1級技能士(陽極酸化皮膜) 立石 直樹
[プロフィール]
昭和49年生まれ。
東京都出身。
平成15年6月入社。
アルマイト全般。担当は硬質アルマイト。
金属塗装関係の会社から、電化皮膜工業に転職。
職人として技術も極めたいが、営業・マネジメントの仕事にも興味がある。
塗装屋からめっき屋へ転職
立石は現在、硬質アルマイトを担当している。
この仕事に就く前は、金属塗装をしていた。
電化皮膜工業へは、現在の立石の上司の紹介で入社した。
業種的には似ていて、転職しても仕事は比較的簡単に覚えられた。
金属に色を塗ることと、金属にめっきをすることの違いくらいで、それほど抵抗なく仕事に入れた。
この仕事は、段階を踏んで1工程ずつ覚えていく。
電化皮膜工業では、入社まもない社員のために勉強会を開催している。
しかし、いくら教科書で勉強しても腕が上がらない。
実際にやってみないと、何も身につかない。
体で覚えること。
これが大事なことだと立石は思う。
そして、もうひとつ大事なことは、手先が器用なこと。
立石自身も手先はかなり器用だ。
1から10まで、「気」と「手」を抜かない
仕事の工程が1から10まであるとしたら、すべての工程で「気」と「手」を抜かない。
それが立石の「職人としてのこだわり」だ。
「最初の1から2の工程でいい加減にやると、最後の10の仕上げに影響して、いいものはできません。だから、“手”と“気”は抜きません。」
電化皮膜工業の仕事は、短納期のものが多い。
納期を守るため、今日は10個できたけれど、明日は11個処理するにはどうしたらいいか、どうやったらできるだけ速く、効率よく仕事ができるのか、会社全体で考え、取り組んでいる。
立石も仕事の全工程を丁寧に行い、よいものに仕上げることにこだわるが、それに加えてスピーディに仕事を処理すること。
これを追求し続けている。
「マイペースでいいものは作れますが、それでは納期が守れません。」
失敗の教訓は「必ず見る」
「必ず手先を見ろ。」と、立石は後輩に言い続けている。
それは自分の失敗から学んだことだからだ。
ホイストという品物を流す機械がある。
入社したばかりの頃、立石はホイストから品物を落としてしまい、品物を全部使えなくしたのだ。
それ以来、必ず手元を目で見て確認するようにしている。
「ホイストのバーに品物をかけて持ち上げるのですが、慣れてくると見ないでもぱっぱと手だけで、できるようになります。指差し確認をしろとは言いませんが、必ずホイストのバーを見ろと言いますね。うまくバーにかかっていないと、つるんとすべって大事故が起こるかもしれません。でも、ちゃんと見てさっと確認したら、事故は防げます。」
全工程を大事にする立石らしいアドバイスでもある。
資格を取ったことで、さらに気を抜かなくなった
電化皮膜工業では、社員に資格を取得することを奨励している。
決して強制ではない。
何年たったらどの資格を取得できるという規定があるので、その規定を読んで社員が自発的に申請するのだ。
立石は、1級の技能士の資格を持っている。
「資格を取ったのは、8割は流れですね。あぁ、来年俺は1級がとれると思ったから、会社に言って申請しました。自然と取ってこようと思いました。あとは、給料も上がるし、技能士と言ったほうがかっこいいですね。せっかくこの仕事をしているのだから、技能検定を受けたほうがいいと思います。」
立石は2級を取得したときは心の変化はあまりなかったが、1級を取得したときは仕事に取り組む姿勢が少し変わったと言う。
「知らないことがあったら、1級のくせに知らないの?と言われてしまうし、あまりミスはしないのですが、ミスをするとそれでも1級かと言われてしまうような気がして、さらに1から10まで気を抜かないようになりました。」
1級技能士になると、周囲から追い込まれる材料になるので、それがさらに向上したいという気持ちにつながっている。
どんな仕事も、面倒くさがらずにやる
「仕事は絶対に一生懸命にやること。どんな仕事でも、面倒くさがらずにすること。」
立石が、後輩にアドバイスしたいことだ。
これが、自分のためになる。
少し仕事に慣れてくると、手間がかかる仕事はやりたくない、そんな気持ちが出てくる。
でも、それでは絶対にうまくならない。
だから、どんな仕事でも、面倒だと思わないでやってみる。
初心を忘れないでやる。
こうして、立石は職人として成長してきた。
将来は、お客様との折衝もしたい
立石は会社のマネジメントにも興味を持っている。
現場にずっといるのではなく、工場長などの管理職になって、お客様との折衝も担当してみたいと思っている。
「現場をこう変えてみたいと提案するとか、工場の中にいるだけでなく、お客様のところに行って提案をするとか。自分でもいい仕事を取ってきたいのです。いつかは。」
職人として技術を身につけ、その知識を今度は営業に生かす。
それが立石の理想としている生き方である。