先代挨拶(2018年12月社長退任)
あえて大量生産に背を向ける!
弊社のこだわり
創業1947年(昭和22年)に創業し、金属表面処理一筋で営んできました。
「めっき」と表現した方がわかりやすいと思います。
昔からある技術でありながら、常に先端産業のキープロセスに関り、半導体の製造装置や、太陽電池など、開発の重要な工程に絡んでいます。
弊社では、大手メーカーさんの基礎研究所や開発部門の方から「こういうところをめっきの技術で何とかできないか」といった問い合わせや、面倒な特注品を受けることが多いのが特徴かもしれません。
また最近では、めっき技術を離れ、「こういう表面状態にできないか」との表面改質の要望も多くなりました。
技術屋としては、採算を度外視してもこだわるときはこだわって対応することを身上としています。
秋本という代表取締役
私が社長に就任したのは、1990年。
父が創業し、兄が2代目を継ぐつもりで働いていたのですが、海の事故でなくなりました。
それで父から「お前、明日から会社に来い」と言われて、そうなると選択の余地がない状態でした。
私は大学院の1年生。
兄が亡くなったのが日曜日で、翌日の月曜日に入社です。
そしていきなり専務になりましたが、お客様も事情を理解してくれて、導いてくれたことを感謝しつつ、そのまま何十年も専務をやっていました。
当時は、200坪の土地に工場兼自宅、従業員は10人くらいでした。
兄がやっていた営業を任されたのですが、私は技術系の人間で、酒もゴルフもやらないからお付き合いがうまく出来ない。
お酒で取った仕事はお酒で逃げていくと、今でも思っています。
お客様が持ってきた仕事に、ただ一生懸命取り組んできました。
「この問題を解決したら口座を開いてあげるよ」と言われ、そういうお客様を大切に、コツコツと仕事を広げてきたのです。
従業員への誓い
弊社では、お客様に満足して頂ける、よいサービスと、よい技術を提供するために、従業員をもっとも大切な資源と考え、さまざまな取組を行っております。
取組のひとつとして、会社が費用を負担して資格取得を奨励していますので、資格に挑戦する人が多数在籍しています。
それは、うちのような小さな会社に来てくれた人に、何とか報いたいと考えたのがきっかけです。
会社がおかしくなっても、また、いつか故郷に帰ることになっても、資格があれば社員は何とか食べていけるだろうということで。
それにみんなが応えてくれた結果として、有資格者が増え、技術力も向上してきたと思っています。
創業期から支えてきた従業員が、平成13年に現代の名工に選ばれ、平成19年には、技術に携わる人間の評価としては、最高の栄誉とされる黄綬褒章を頂きました。
私たちの業界では、学会推薦で従業員が黄綬褒章を受けたのは、初めてのことだそうです。
その他、2級技能士、1級技能士、マイスター(高度熟練技能士)も多数在籍しております。
技能伝承と感性価値
弊社では、定年後の再雇用をしており、60歳以上のベテランが多数在籍しております。
それぞれの年齢にふさわしい仕事というものがあるからです。
入社したら、まずめっきの電解液を分析してもらいます。
液を一定に保つことを学ぶためで、最も基本的で、難しい仕事です。
これをまず身につけてもらい、劇毒物などの国家資格に挑戦させます。
ひとつをクリアしたら、レベルの高い資格に挑戦…この繰り返しで資格と経験を重ねていきます。
若い人は、ちょっと上の先輩が資格を取ると、「次は自分の番だな」と思うみたいです。
それぞれ技能検定には実技がありますので、マイスターや名人がやって見せると、その速さと正確さに若手はみんな驚くわけです。
いい手本、いい先生が同じ職場にいるわけですから、若い人は恵まれていると思います。
日本の技術を伝えることの誇りを大切にしたい。
最近特にその思いが強いです。
日本のものづくりの根本にあるのは、感性とこだわりです。
例えば「雨」を表現する言葉が日本語には20以上もある。
この感性をものづくりに生かせたら、世界中どこにもないものが出来ると思います。
そして、江戸時代の職人が持っていたようなこだわりの精神。
これを伸ばし、伝えていけば、外国ではまねのできない、付加価値の高いものづくりが実現すると思うのです。
だから、若い人には、失敗するまでやらせることがあります。
後始末が大変ですが、とにかく最後までやらせる。
そして失敗したらその原因を考えさせ、私たちも一緒に考えます。
そうやって”勘どころ”をつかんでもらう。
ISO9001を取得していますから、一応マニュアルで標準化しています。
でも、マニュアルばかりに頼ったり、自動機械を使ったりするよりも、人間が見て、触って、感じることが大事なんです。
ですから、弊社ではあえて大量生産はしません。
量産工場ではできないことをやっているという誇りがありますから。